2017.06.13

白河夜船 (新潮文庫)

白河夜船 (新潮文庫)

気づくともう、頭が少しずつ背もたれのほうへ沈んでゆく。はっと起きて雑誌をめくってみるのだが、気づくと同じところを幾度も読んでいる。まるで教科書を見つめて眠る午後の授業中のようだわ、とまた目を閉じた。外の曇り空が部屋の中へ流れ込んできて、脳髄をおかしているみたいに思えた。回る洗濯機の音も、なんの目覚ましにもなりはしなかった。私はもう、なにもかもがどうでもよくなり、ブラウスとスカートをずるずると床に脱ぎ捨てて、ベッドに入った。


私はもともと、寝つきがかなりいい方で、布団に入ればいつでも眠れた。
その代わり、眠りが深く、昔から「昼寝」が苦手で、ショートスリーパーがうらやましかった。
朝型人間を自負するように、寝覚めもかなり良くて、早い時間に目を覚ますのも、起きててきぱきと動くのも得意だった。
朝が苦手な家族の中でいちばん早起きだったし、実家にいるときは朝いちばんに起きて、家族の分まで準備することもよくあったと思う。

ところがここ最近、寝覚めが悪く、一日中夢の中にいるように体が重かった。
まるで現実逃避のように、睡眠に逃げてしまいたい衝動に悩まされてる私にとって、思わぬタイミングで出会った一編。
主人公の女性の生活が、眠りに浸食されている様子が、ここ最近の自分の生活と重なった。

痛々しさと切なさを、やさしく肯定してくれる作品だった。
逃げることを悪とする社会に対して、そういう休息をとることは悪じゃないと語ってくれる。
内容は重々しく、救いも見えないけれど、そういう暗闇の中にいる人たちにとって、休息を肯定してくれる言葉はどれだけありがたいことか。


つい最近も、教授が「鬱の中にいる人がとるべき行動はただひとつだけだよ。一刻も早くそこから立ち上がって、とにかく歩き続けること。余計なこと考えられないくらい、疲れてしまえば大丈夫。ひとりで部屋の中で考えても、答えなんて出ないんだから。」と言ったのだけど、私もその言葉には賛同する。

私自身もうつ病になりかけたし、周りにもうつ病の人や経験のある人が多いからわかるのだけど、暗闇の中で答えを出そうとしても出るわけがないのだ。
心を放してじっくり休むか、体が疲れるまで動くか、これしかないと思う。


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まるで祈りのような気分だった。
―この世にあるすべての眠りが、等しく安らかでありますように。

やさしさをギュッと詰め込んだこの言葉に、どれだけの人が救われたのだろうか。
私がつらかったとき、やさしく寄り添ってくれたり、明るい方へ引っぱってくれた人たちのように、私もそういう人になりたいと思う。



そしてまぁ、私の睡眠の件は、少しずつ解決に向かっている。
朝方体が重く、なかなか起き上がれないのはつらいけど、起きれない自分を責めたりするのはやめようと。
思い通りにならないとき、自分でさえも自分を否定したらだめだよな、やさしくしてあげたいなぁ。